あてもなく

誰かへの手紙

主婦という「ジョブ」について



先日、NHKの新しいドラマの第1話をちょこっとだけ見ました。

なんかちょっと面白そうだったので手を止めて見てしまったのですが、あまりにもストレスが強すぎる場面が続いてしまってしんどくなったので、結局途中で見るのをやめてしまいました。

このあと、物語には痛快な逆転劇が用意されていて、その「スカッと」感を際立たせるためにあえて主人公はひどい目に遭っているんだろうなということはわかるのだけど。最近、ストレスに敏感なのかも。

今の世の中、ただ生きてるだけでも十分ドラマチックに悲劇的で、ストレスフルですからね。

 

まあそんなわけで、ほんの10分20分ぐらいしか見てなかったんですが、その中で出てきたひとつのセリフについていろんな事を考えてしまいました。

 

セリフ自体はありがちなのです。

夫婦の言い争いの中で、夫が妻に放った言葉。

 

「文句があるなら俺と同じぐらい稼いでから言え」

 

ちょこっとしか見てないからよくわかんないけど、妻は多分、専業主婦。夫は社会的にステータスの高い職業で稼ぎの良い人のようです。

そのセリフ以前にもずいぶんとモラハラ放題のシーンが続いていて、最後「言うかな、言うかな」と思って見てたらやっぱり言ったのが上記のセリフでした。

(ドラマとはいえ)本当にそんなこと言うヤツいるんだ!って思ったんだけど、案外リアルにもありふれているのかもしれない。

わたしは言われたことないけど、ネットで軽く検索してみると、同種の言葉はいろんな場所で話題になっているみたい。

 

limo.media

 

select.mamastar.jp

 

夫が、専業主婦である妻に投げかける言葉としては、多分最悪の部類だろう。

破滅の呪文と言ってもいい。

だけど実際には「悔しいけどその通りだから言い返せない」と思って我慢したりしてる人が多いのかも知れません。

「じゃあ、あなたこそわたしと同じぐらい家事とか育児とかやってみなよ」って言い返してそれで「ゴメンナサイ」ってなるような相手なら最初からそんなこと言わないだろうし。

結局「家事や育児なんて(俺様の仕事に比べれば)ラクなもんだ」って思われていることがわかって傷つくだけなんだろな、と。

 

で、もし自分がそれを言われたらどういう風に考えるかなあって思ったんだけど。

 

専業主婦であるわたしが、明日から急に働き始めたとして夫と同じぐらい稼ぐのは確かに絶対無理です。今から家事とか全部放り出して10年頑張ったって絶対追いつけない。

それは、これまでのわたしの人生に、全くキャリアを積むような機会がなかったから。

だけど、もし、わたしが大学を卒業してからの20数年間、結婚しないで子供も産まないで、100%仕事と自己研鑽に打ち込み、社会に対して実績と信頼を積み重ねて生きてきたならば。

実態としてなんぼ稼いでるかはともかくとして、「俺と同じぐらい稼いでみろ」なんて馬鹿にされるようなことはなかったわけです。

 

そもそも今日の今日まで、妻が社会に通用するキャリアを積めなかったのは、夫を支えるためです。

つまり「俺の稼ぎ」の土台にあるキャリアには、妻が自分の足元に積まずに代わりに夫の足元に積んだ分も含まれているということ。

自分の足元がどういう風に成り立っているのかも忘れて、妻を見下すような発言をするなんて。

 愚かを通り越して、恥ずかしい。

……って思っちゃうよね。正直w

RPGで例えてみる

RPG風に言えば、主婦っていうのはいくら働いてもレベルアップしないジョブだと思います。

主婦は戦闘力も防御力も低いので、高価なアイテムが手に入るダンジョンに出かけていったりすることはできません。外に出るとしてもせいぜい街の近くの低レベルモンスターをちょこちょこ狩って小銭を手に入れるかどうかぐらい。基本は、安全な街の中で食事を作ったり家の管理をしたりしています。

働いた結果経験値が得られていないわけではなく、ちゃんと働いた分だけ経験値は手に入っている。

経験値は手に入っているのに、どうしてレベルアップしないのか?

それは、その経験値をそのまま同じパーティーにいるほかのメンバーに振り替えているからです。自分が得た経験値を自分のレベルアップに使わずに、夫(や子供)の経験値に振り替える。

それが、主婦というジョブ独自の特殊スキルなのです。

このスキルを上手に使って、パーティーのメンバーのレベルを上げていけば、自分の経験値を自分のレベルを上げるのに使った場合よりもパーティー全体を強くすることができる。

 

というのも、このゲームはちょっとクソゲーなところがあって。

女性キャラは同じだけ経験値を得ても男性キャラよりレベルアップしづらかったり、同じレベルで同じクエストをクリアしても、男性キャラよりもらえる報酬が低かったりするんですよ。

それならば、女性キャラが得た経験値を男性キャラに振り替えて、男性キャラを集中的にレベルアップさせた方が効率良いよねって話になる、そんな場面が結構多いんです。

このクソシステムをどうにかしなきゃいけないってことは、もうずっと前から言われているけれど、わたしが20代から40代を生きたこの時代には、まあどうにもなんなかったですね。

それで、わたしは、自分が個人として強くなることより、パーティーを強くすることを選んだ。そういう戦略でこのゲームを戦ってきました。

 

このルールで長年戦ってきたパーティーにおいて、

「俺と同じぐらい稼いでみろよ」

というのは全くナンセンスな発言です。

「俺」は、主婦から経験値を提供されることにより、自分ひとりで得た経験値ではおそらくたどり着けなかったレベルにまで成長してきたのだから。

 

ただね、こう書くとなんか妻ばっかり犠牲になって夫がトクしてるみたいに見えるかもしれないけど、実はそうとも言い切れない。

だって、他人の経験値まで引き受けてひとりで戦わなきゃいけないってのは、相当なプレッシャーだと思うんですよね。

二人分の経験値を背負って戦いに行くというプレッシャーに打ち勝って、パーティーの利益を最大化することを考える。それは、誰にでも出来ることではないのかも。

そういう意味で、このゲームのクソシステムの割を食ってるのは、なにも女性ばかりではないということかもしれません……。

 

ドラマの話に戻る

この話題のきっかけになったドラマだけど、どうやら妻は家を出てどこか別の場所で「自立を目指し」新しい一歩を踏み出すことになるらしい。

あそこまでのモラハラ描写をしてきたんだから、みんなそれは「当然かな」って思うだろう。

あんなやつ、別れて良かったよ。今日から自由だね、って。

だけど、夫から離れ本当に体一つで飛び出すとしたら、妻が今まで夫に振り替えていた経験値って丸損になるんだよね。

目に見えないものだからみんなあんまり気付いてないかも知れないけど、それって期間が長ければ長いほど大変な損失だと思う。

 

だから、ほんとはそういう場合はその部分をちゃんと精算をしたほうがいいと思うんだよね。振り替えた経験値は元に戻らないので、お金で代替するしかないかな。

その辺りの計算ってどうやるんだろ。考えただけでストレスフルですな~。

 

www.nhk.jp