あてもなく

誰かへの手紙

「神対応」と原則のルールを守ることについて

あなたは、あるイベントに興味があってどうしても行きたいと思うのだけど、その日は他にも予定があって、どんなに急いでもそのイベントの開演時間までに現地にたどり着くのは難しい。

5分遅れぐらいならなんとかなるかもしれないけど……。

公式サイトには「開演時間を過ぎてからのご入場はお断りいたします」と明記してあります。

 

とりあえず、ダメ元で運営に電話で問い合わせてみます。

「5分ぐらい遅れてなら行けそうなんですけど、入場させてもらうのは無理ですかね?」

が、電話口に出た担当者には

「そうですねー、説明書きにあるとおり開演後のご入場はお断りしておりまして……。時間までにお越しいただけない方にはお入りいただけません。申し訳ありませんが」

と断られてしまいました。

そこで、あなたはそのイベントに行くのは諦めました。

 

ところが、後日何気なくTwitterを見ていると、そのイベントに参加したらしき人が

 

「10分ぐらい遅刻しちゃったけど入れてもらえた!よかった~」

 

などと書き込んでいるのを偶然見かけてしまいました。

 

なんで!?

って、なっちゃいますよね。

自分は5分遅れるかもしれないって正直に申し出て断られているのに、何も言わず10分遅れた人が入場させてもらえるなんて。

それなら、事前に確認なんかせずに自分も黙って5分遅れで行けばよかったじゃん。

運営、ちょっとひどくない!?

 

10分遅刻したのに会場へ押しかけて入場させてもらえた人にとっては、このような柔軟な対応は「神対応」と言えるでしょう。

ですが、事前に告知されたルールをきちんと守ってその手前で入場を諦めた者からすれば、かなり釈然としないものが残ります。

この場合、誰が正しくて誰が間違っているんでしょうね?

 

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この手の問題に、わたしはお客側ではなくて、運営側の当事者として直面しました。

わたしは近日開かれる予定のイベントに出展者として参加する団体の、リーダーをやっているのですが、わたしのところへ、入場希望者から上記のようなイレギュラーな問い合わせがあったのです。

イベント会場を運営している大元の組織は別にあります。

我々はその大元の運営から場所を借りて参加させてもらう立場なので、運営とお客の中間ぐらいの立場なのです。

 

「開演時間を過ぎたら入場をお断りする」

というのは、大元の組織がイベントを通じて全ての出展団体と客に対して示している原則のルールです。

わたしはそれを根拠に、その入場希望者に対して、

「開演時間を過ぎてからのご入場はできません」

と型どおりの返答をしました。

それで、その入場希望者はイベントへの参加自体を諦めることになりました。

しかし、そのように答えたあとに、「本当にそれで良かったのか?」とモヤモヤしてしまったんですよ。

 

そこで、わたしは念のため大元の運営に確認してみることにしました。

 

「わたしは、遅刻する予定だという参加希望者を、原則のルールを根拠にお断りしてしまったが、万一、当日うっかり遅刻してきてしまった別の参加者を、その場の柔軟な判断で会場に入場させるような対応が行われる可能性があるのであれば、今日お断りをした参加希望者に大変申し訳ないことになってしまう。この”原則のルール”というのはどの程度絶対的なものなのか」

 

そしたら運営の方は「内々の話」とした上で「柔軟な対応をする可能性がある」と言うではありませんか。

 

「たしかに、その場の状況を総合的に判断して、遅刻者の入場を許可してしまう可能性はあります。

だって、チケットをお持ちになって現地へ来てしまった人を、原則のルールがあるからといって、それだけでむげに追い返すのは、現実問題としては難しいじゃないですか」

と。

その上で、わたしに対しては、

「そのお客様へは、”状況により入場できる可能性があるので、もしよければ当日来てみて現地の係の者に直接聞いてみてください”とご案内されてはいかがでしょうか」

との提案がありました。

 

そこで、わたしは先にお断りした参加希望者に連絡を取り、そのようにお伝えしました。

幸い、このイベントは、予約制ではあるもののお金を頂くイベントではないので、もし結果として入場できなかった場合でもちょっと時間が無駄になるだけで済みます。

とりあえず、その方はその点ご了承された上で「参加」ということで無事予約を取られました。

「柔軟な対応」が可能なのであれば、5分遅刻ぐらいだったら間違いなく入場させてもらえるだろうなというのがわたしの見立てです。

だからこそ、最初に「原則」を元にお断りしたときに、自分の中にすごい違和感が残ったのですね。

 

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運営、出展者、などと固い言葉で説明しましたが、そもそも、このイベントはお金が絡むようなものではないし、それほどきちんとしたイベントではないんですよ。

仲間内のお楽しみ会に限りなく近い感じの。

ただ、そんなゆるやかなお楽しみ会であっても、百人前後の人間が関わって運営していくにあたってはそれなりに「原則」は必要です。

毎年繰り返されてきたものではなく、コロナ禍の影響で従来のイベントの代替として今年初めて開催されることになったものなので、全員が手探り状態で、だからこそ「原則」が大事だとわたしは思います。

 

遅刻お断りなのも、「予約」が必要なのも、コロナ禍ゆえ。

会場の中にいる人の人数や身元をきちんと把握するためにと考えられたものです。

このお楽しみ会がこれからも存続していくためにも、参加者一同ルールは守る、だけどみんなの「和」を大切にするために、現場では出来る限りの柔軟な対応をする。

 

なかなか難しいものですね。

そのイベントを成功させるため、ここ最近は毎日頭がパンパンになるぐらい考え事をしています。完全ボランティアなのにwww

多分、わたし、この仕事向いてないよ。もうしんどい。

もうあとちょっとだから頑張るけどさ~。いやはや。