あてもなく

誰かへの手紙

「働きやすさ」を考える 多様性という強み

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新しい仕事にもだんだん慣れてきました。全く未知の世界に飛び込んだので大変なこともたくさんありますが、概ね楽しく働いています。なんというか、今の仕事はこれまでの仕事で感じた心の負担みたいなのがなくてとても働きやすいなあと思います。

それで「働きやすい環境」ってどういうことを言うのかな、と改めて考えてみたのですが。

それは感情ではなく仕組みで達成されるべきことなんだろうな、と思いました。

 

みんなが仲良しで「大丈夫?しんどくない?」「大変だけどがんばろね」などとお互い励まし合って働いている職場でも「誰かが休むと誰かに負担が行く」「休む・帰ると言いづらい」ような職場だったら、「働きやすい」とは言えません。

逆に、お金と時間で割り切った人ばかりが働いていて、お互いが無関心でドライな職場でも、都合の良い日にだけ働けて時間になったら帰れて、誰に気兼ねする必要もない職場であればその方がよほど「働きやすい」と言えるかもしれません。

極端な表現ですが、以前働いていた職場は前者、現在の職場は後者に近いかもしれません。

 

以前の職場では、大抵子持ちの主婦で同じぐらいの年齢層という似通った属性の人たちが選ばれてパートで働いていましたが、お互いの事情が理解し合えて楽しい反面、利害がぶつかるので調整が難しい面がありました。

利害、つまりたとえば子供の学校行事は大体みんな同じような時期に一斉に行われるし、長期休暇の間家で留守番になる子供たちのことが心配なのもみんな一緒なので、働けない時期がかぶってしまうんですね。

以前の職場は「和」を重んじる気持ちの強い人が多く、優しい人が多かったです。それはとてもありがたいことでしたが、そのため自分ばかりトクすることにならないように学校行事を見に行くのをあえて我慢しあったり、「○○さんのお子さんは中学最後の晴れ舞台だから行かせてあげたいよね」みたいな「空気読み」が必要になるのが大変でした。

そういう「空気読み」をしないと「みんな仲良し」という環境が保てないのはちょっとしんどいけれど、それでもやっぱりみんなが権利を主張するよりはよほど良い環境ではあるので、それを守りたいと考える。もちろんそれは良いことです。

いい仲間に恵まれて良かったなあという気持ちは強いですが、あれこれ取っ払って超個人的な感想ということであれば「やりづらかった」と言わざるを得ません。

 

一方、今の職場は老若男女いろんな人が働いていて、国籍さえも様々です。

子供が学校に行っている間だけ働きたい主婦もいれば、学校がない時間に働きたい学生もいるので、お互いの利害は調整しなくとも一致します。

また、主婦といってもいろんな年齢層の人がいて、小・中学生の親の繁忙期を幼稚園・保育園児の親が支えたり、その逆も。また、わたしのような子育てがある程度落ち着いた主婦が可能な範囲で全体を薄~くカバーしたりすることができるので、相手を理解したり共感したりしてまで調整する必要はありません。

その他、いろんな事情を抱えた人たちが自分の都合に合わせて働くことが前提なので、そもそも「お互いを深く理解しよう」という気にすらならないところが却って清々しいと思うのです。

そんな「理解し合っていない同士」の寄せ集めが、店のルールというひとつの秩序に取り込まれた途端、ひとつの生き物のようになって動き出すというのは、ちょっと感動的な情景だなあと思います。

また、その生き物の一部になって働くのはなかなか気持ちの良いことです。

そして、時間が来たら交代要員がぱっとやってきて「はい、終了!」と切り離されるのも気持ちが良いです。

そこには「あなたは早く帰れていいね」とか言ってくるような人はひとりもいません。みんなが自分の都合で働いているので「あいつばっかり」というのがないのです。

 

このように働いてみて思うのですが、多様性がある組織にはそれ独特の強みがあるんですね。もちろん、均質な人々を揃えてチームを作ることで発揮される強みもあるのでしょうが、少なくとも、雑多な属性の人が誰でも利用するような店を毎日朝から晩まで営業する場合においては、対抗する手段は「多様性」をおいてほかないと思います。

また、この人材難といわれる社会においては、もしかしたらわたしの前職のような大企業的「堅めのオフィスワーク」をする会社においても、今後は「多様性」が鍵になってくるんじゃないだろうか、と思ったりしました。

 

そんなに長く続けるつもりもなく軽い気持ちで始めた仕事だし、現状でも別にこれが自分の天職だとかいう気持ちは全くないです。

「軽い気持ちで飛び込んで知見を広げて面白がりたい」という動機で働くわたしもまた「多様性」を構成するひとつのピースなので、それでいいのです。

「働く」ってこれぐらい気軽で良いんじゃないかなあ。