あてもなく

誰かへの手紙

思い出の牛乳キャップ

先日、帰省の時にちょっと足を伸ばして立ち寄った観光地の、フードコートで販売されていた瓶入りのヨーグルトは、紙のキャップで封されていた。

物珍しさもあって、子供が「いかにもおいしそう」と喜んで購入したが、キャップの開け方がわからないという。

昔は学校給食の牛乳といえば瓶入りで紙のキャップだったんだよーと教えつつ、わたしが開封してやった。

爪の先で端っこをちょっとめくってとっかかりを作り、力加減に注意しながら引っ張り上げると、ポロリと取れた。

昔取った杵柄ってやつよねー。

子供が小学生の時代には給食の牛乳なんかとっくに紙パックに取って代わられていた。瓶入りの牛乳なんて、今は銭湯ぐらいでしか売られてないんじゃないのかな?

しかも、その銭湯ももう風前の灯火だしね。

 

そういえば、牛乳キャップを外す専用の道具っていうのもあったんだよね。

がっちりハマってどうしてもキャップが取れない時は先生に頼んでその道具を貸してもらったりした。その道具は棒の先に針が付いたような形状をしていて、キャップの真ん中にブスッと針を刺してテコの応用で取り外すのだ。

微妙に危ないからその辺に転がしておく訳にもいかず、先生が管理していたが、キャップの真ん中に穴が空いてしまってコレクションの価値が下がるので、本当にどうしようもない時だけその道具に頼るという感じだった。

 

コレクション。

そう、小学校の中学年ぐらいの頃だっただろうか、学校では牛乳キャップを集めるのが異常に流行したことがあった。

牛乳キャップはただ集めるだけでなく、友達同士で勝負して取り合う遊びの道具だった。

遊び方としては、おそらく大昔のメンコとかと同じルールだと思われる。(わたしはメンコのことをあんまり知らない)

各自、手持ちのキャップをそれぞれ1枚ずつ場に出して勝負に参加する。

順番に技を用いて自分以外のキャップに攻撃を加える。攻撃により、他人のキャップを裏返すことが出来れば、そのキャップは自分のものになる。

そんな賭け事の要素もあったので、遊びに参加するにはできるだけたくさん手持ちのキャップを用意しておく必要があった。

 

はじめは学校の小さな仲間内で流行っていた牛乳キャップだが、そのうち流行は地域に広がって、弟妹が通う近隣の幼稚園などで供されていたメーカーのもの、あるいは従兄弟や、塾・習い事で交流のある他校生徒が持っている違う地域のメーカーのもの、旅先で出会ったものなど、様々な種類のキャップが流通するようになった。

自分の学校の給食に出てくるキャップよりも、他校のもの、それもより遠方の地域のもの、他の誰もが持っていないものを持っている事が自慢になる。

レア度によってキャップに価値の序列が生まれ、当時は「レア」なんて言葉はなかったけれど、レアキャップ限定試合が組まれたり、暗黙の交換レートっぽいものが制定されるなど、文化としてかなりの成熟を見せた。

 

そして、牛乳キャップの流行はついに、経済を動かす。

近所の駄菓子屋で「偽キャップ」なる商品が販売されるようになったのだ。

厚紙に牛乳キャップっぽい絵柄がカラフルに印刷され、丸く切り抜けるようになっているシロモノで、A5ぐらいのサイズで10枚ぐらい取れるようになってたと記憶している。

値段は全く覚えていないが、まあ1シート10円程度だったんじゃないかしら。

偽キャップはトレーディングキャップとしての価値はゼロなのだが、

「俺、(偽キャップ入れたら)キャップ1000枚持ってるぜ~」

的な自慢をする際の数には入れることができたし、普通の牛乳キャップと違ってフチの反り返りがない分、キャップバトルの手札としては強かったため、キャップのレア度無制限の試合ではそれなりに使いみちがあった。

わたしも何枚か購入して持っていた。今考えるとバカみたいだけどw

 

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旅先で手に入れたヨーグルトのキャップ

このキャップも、当時のコミュニティでは相当のレア物だったと思うと捨てられず、こっそり持ち帰った次第である。