最近こういうアニメを見ていました。
放課後ていぼう日誌。
海辺の町にある高校の、風変わりな部活「ていぼう部」が舞台のお話。
この部の活動内容は、主に堤防からの釣りを楽しむこと、釣った魚をおいしく食べること。
ジャンルとしては「女子高生の日常系アニメ」といったところですが、「釣り」の扱いは至って真面目に丁寧で、勉強になることも多くて楽しく全話見終えました。
「つり人」という専門雑誌のサイトでも取り上げられたりしています。
釣りをする人にもしない人にも面白いアニメでした。Amazonプライムビデオでも見られます。
さて。
「釣った魚を美味しく食べる」という場面では、「魚屋の娘」という設定の先輩が魚の下処理から料理まで教えてくれたりします。釣りたての魚を食べるシーンはとってもおいしそう。
しかし、彼女らは高校生なので当然飲み物は麦茶とかそんなんもんです。
「いや、そこはビールでしょう」と大人心に身もだえしながら見ていたところ、半分ぐらい進んだところで顧問の先生(20代後半の女性)が登場、部室にビールを持ち込みます。
「そりゃビールが欲しいよね、そこは!」とわたしなどは最大限共感していたのですが、生徒達はのっけから迷惑そうな様子。
あらあら?と思っていたら、先生、飲み始めてしばらくするとご機嫌を通り越して周囲に絡み始めてしまいました。
そう、この先生は「酒癖が悪い」という設定のキャラクターだったのです。
それ以降、先生は何度も登場しますが、毎回「ビールは禁止」「絶対お酒飲まないって約束するなら来ても良い」などと生徒達から散々釘を刺され、疎まれます。
そりゃ、絡み酒なんて普通に迷惑ですからね。
でも、それを見て思ったのです。
なんでこの人もっと行儀良く飲めないんだろうか、と。
もし行儀良く飲める人ならこんなに生徒達からも嫌がられず、魚もお酒ももっと楽しめるだろうに、もったいない……。
そして「また”お酒=悪”って考える人が増えてしまうな」と残念な気持ちになりました。
ま、そもそも部室で顧問が飲酒すること自体容認できないという意見の方が多いでしょうけど。
わたしはお酒が好きなので、釣りたての魚を食べるって時にビールを持って行きたい気持ちはよくわかるし、個人的には、フィクションだし、たまになら固いこと言わなくてもいいかな、というぐらいの感じですが、このアニメの視聴者層には、飲酒に対するネガティブなイメージがすでに共有されているのかもしれないし、このエピソードによってそのイメージがまた強化されるんだろうなと思いました。
思えば、最近は昔に比べて「お酒を飲む」ということが若い人たちにとって身近なものではなくなってきていますね。
親戚で集まって酒を飲むみたいなのも近年は減ってきてますし、ここへきてコロナ禍でしょ。「夜の街クラスタ」なんて言葉もできてますますお酒を飲む機会は減りました。
昔は、強い弱いに関係なく宴席ではお酒が提供されるのは当たり前で、勧められれば断らないのがマナーぐらいの感じだったので、成人すれば多くの人が半ば義務のようにお酒を覚えようとしましたが、最近は「好きな人だけ飲めば良い」「強要するのはよくない」という認識が一般的になりました。
飲酒運転の害悪がきちんと認識されて罰則が厳しくなったのもそうですし、最近はアルコール依存症の問題も一般的に知られるようになってきて、その辺の知識がしっかりすればするほど、まともな人は「お酒なんか飲んでも良いことなさそうだな」って考えちゃうと思うんですよね。
お酒を強要されないこと、危険性がきちんと認識されること、それ自体はとても良いことだと思います。
わたしも、やっぱりお酒には怖い面があると思いますから。
でも、こういう世の中がどんどん進んで、
お酒をつくること、
お酒に合う食べものをつくること、
お酒を飲む場所を提供すること、
といったお酒にまつわる文化がまるごと衰退してしまったら、お酒が好きなわたしはちょっと寂しいなあとも思ってしまうのです。
楽しくマナー良くお酒が飲める「カッコいい大人」な先生像をアニメの中で描くことはもう難しいのでしょうか。
そんな世の中に既になってしまったのだとしたら、お酒も最終的には煙草と同じような末路かもと思いました。