あてもなく

誰かへの手紙

ファストフード店員が、消費増税・軽減税率が始まったらどうなるか考えてみる

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どうやら、今年10月に消費増税が行われるのは間違いなさそうな雰囲気になってきました。

昨日あたりは、テレビのワイドショーなどで一斉に消費税増税後の軽減税率について取り上げられていました。

 

news.tv-asahi.co.jp

 

なかでも難しいのは外食の扱いだ。イートインスペースがあるコンビニでは持ち帰りとイートインで食べるのでは税率が異なり、会計の際に混乱を招きそうだ。さらに、1日に国税庁の新たなガイドラインが発表された。

 

(8月)1日に国税庁の新たなガイドラインが発表された、とありますが、サラッと検索してズバリそのものは出てきませんでした。

 

www.nta.go.jp

 

こちら、国税庁のサイトです。

PDF集になっていて、中身を見ると”令和元年7月追加”という項目がいくつかありますので、内容的にはおそらくこれかなあと思います。

わたしが働くファストフード店が影響を受ける内容は主にこの中の「III 外食の範囲」という項目に記載されています。

 

news.tv-asahi.co.jp

 

遊園地のクレープ屋さんではテラス席か食べ歩きができます。テラス席だと外食扱いになりますので、消費税は10%です。テラス席がお店のものである場合は消費税が10%となります。食べ歩きだとテイクアウトになりますので消費税は8%です。同じクレープであってもテラス席で食べる場合は消費税が10%なんです。お店のものである場合はお店の中と考えてイートインになるので10%なんですが、持ち帰る場合は消費税が8%で軽減税率が適用されることになるわけです。

 

ざっくり言えば、同じお店で同じ食料品を買っても、買った人がそれをどこで食べるつもりかによって、支払いの際の消費税の税率が変わってくるという話です。

話題として盛り上がるようで、テレビでは色んなケースについてイラスト付きで「この場合は10%、こうだったら8%」と事細かに紹介していました。

なかなかうんざりする細かさで、途中で聞くのも嫌になってしまいました。

だけど、これって自分の仕事に大きく関わってくる話です。 

わたしの働く店でも今年の10月からは、イートインとテイクアウトで違う値段で商品を提供するようになるのでしょうか。

もしもイートインとテイクアウトで値段を変えて販売することになったら

わたしの働く店では、商品の値段は税込みで表示されています。レジ業務を簡略化するため、税込みですべて10円単位での値付けになっています。

おそらく他のファストフードチェーンでも大体同じなのではないかと思います。

 

たとえば、現在ハンバーガー・ポテト・ドリンクのセットで税込600円で販売されている商品があります。これは、現状の8%の税率では本体556円+税44円という内訳です。消費税が10%になると、本体556円+税55.6円=611.6円になります。10円単位での値付けだと、単純に四捨五入して店頭価格は610円ってところですかね。

 

だから、値段を変えて販売するとしたら、同じ商品でもイートインのお客様からは610円いただいて、軽減税率が適用されるテイクアウトのお客様からは600円いただく形になります。

同じ商品なのに、会計が10円も違ってくるとしたら、店内で食べるつもりで来店したお客様の中に「テイクアウトです」と偽って申告する人が出てくるかもしれません。

持ち帰り用に包装された商品を受け取った後、それをしれっと客席に持ち込んで食べる。

現在でも、持ち帰りと申告したにもかかわらず、途中で気が変わって店内で食べていくお客様がいないわけではありませんが、特にそれはとがめられる行為ではありません。が、消費増税後の世界でそれをするのはルール違反になります。

とはいえ、そのルール違反に対して客席を監視したり声かけをしたり、場合よってはレジに誘導して会計をやり直して余分に税金を徴収したりするようなことをするのは、わたしたち店員の仕事ではないように思います。

店員は、税金の番人ではないのです。

 

また、もともとイートインのつもりなのにテイクアウトと偽ったお客様が店内で食事をされた場合、本来必要のなかった包装材が店内のゴミ箱にたくさん捨てられ、あふれてしまうことになります。

これも数が多くなると見過ごせない問題になると思います。

わたしが勝手に予想する実際の運用

以上のことを考えると、わたしは、ファストフードショップなどではイートイン・テイクアウトで違う価格を設定するのはあまり良くない策なのではないかと思います。

お客様にとっては店内で食べても持ち帰っても同じ、というふうにしておかないと、食事の提供という本来の店の運営に支障が出てしまいかねません。

とはいえ、法律は法律ですので、正しく消費税を納めるのは店側の当然の義務です。

そこで、考えられるのは、商品の価格は一律で内税の税率だけを分けるという方法です。

 

例えば600円のセットを販売したとき、テイクアウトの売上からは44円、イートインの売上からは54円を、消費税として納めるようにするのです。

お客様の財布から出ていくお金の額が同じであれば、イートインするつもりなのにテイクアウトと偽るお客様が現れる心配はありません。

 

そもそも…

店としては安くて美味い商品を素早く提供することでお客様を喜ばせようと思って商売をしているわけです。

ですから、お客様にとって本当に都合の良い形で自然に注文していただける状況でないと、本来店が企業理念で掲げる「楽しい食事の体験」を提供することができなくなってしまいます。

そういう意味で、消費税やそれにまつわる今回のような話は、商売にとって余計なノイズでしかありません。

 

消費税が導入されて、販売の過程に徴税の手順が組み込まれたため、わたしたち店員は、知らず知らずのうちに税金取り立ての手先の役割を果たす羽目になってしまいました。

それでも、ただ普通にレジに入力すればそれで済んでいるうちはまあそんなもんかな~でよかったのですが、そこへ今回のような消費増税・軽減税率という考え方が加わると、消費税の徴収が”ついで”の業務では済まなくなってしまいました。

繰り返しになりますが、ハンバーガーショップの店員の仕事はハンバーガーの販売であって、わたしたちは税金の番人ではありません。 

 

上記で紹介した国税庁のガイドライン(PDF)を読んでいると、

客に対して「どこで食べるか」の意思確認を明確にしろ

だの

店内の休憩スペースが飲食コーナーにあたるかどうかをきっちりわかりやすく表示しろ

だの

今までなかった仕事を気軽に増やそうとするような文言が並んでいてかなりモヤッとします。

 

正直、きっちり消費税を徴収したところで店にはなんのトクにもならない話ですから、それらを真面目にやっても店員の仕事が大変になるだけで、お給料が良くなったりはしません。

 

消費税を払う消費者の視点だけでなく、店員の立場からもやはり負担感の大きい10月の消費増税となりそうです。