あてもなく

誰かへの手紙

感じの良いお客様が、感じ良いねってほめてくれた

先日、店内で飲食中のお客様が「飲み物をこぼしてしまいました……」と申し出てこられたので、同じものを新しく作り直してお出しし、床はモップで掃除した。

お客様は恐縮されて何度も「ごめんね」「ありがとう」と声を掛けてくださり、とても礼儀正しいお客様だった。

年の頃は、わたしの親まではいかないけど、そこそこ年配の女性のお客様だった。

この対応はマニュアルで決まってるので、その場にいたのがどの店員でも、どんなお客さんでも、同じように対応することになっている。

別にわたしが神店員ってわけでもないのよ。

 

それから数日後。

そのときのお客様が来店され、たまたまわたしがレジだったので顔を覚えてくれてたらしく「こないだはありがとうね」と、改めてお礼を言ってくださった。

「ここのお店は、本当に店員さんが感じが良くていいわね」

とお褒めの言葉。

こちらこそ、そんな風にちゃんと覚えて声を掛けてもらえてとてもうれしい。

そういうお客様こそ、とても良いお客様だと思う。

お客様の感じが良いから、私たちもちゃんと感じよく対応させていただけるんですよって思う。結構、そういうのって鏡になってるんじゃないかと思うんだよね。

 

実はね、店内に飲み物をこぼしても、何も言わずにそのまま帰ってしまわれるお客様も時々いたりするんですよ。別のお客様から「床になんか飲み物がいっぱいこぼれてるよ」って教えられて慌てて片付けに走るなんて事もしばしば。

という具合なので、その場でちゃんと「こぼした」と申し出てもらえるのは、それだけでとてもありがたいことだ。言っちゃナンだが、飲み物の原価なんてホント大したことないので、こぼしたときは是非とも申し出ていただきたい。

 

さて、この話には続きがある。

わたしはいつも職場の近くの商業施設に併設された駐車場に車を停めて仕事に行っている。その日、仕事が終わって帰り、商業施設に入って駐車場へ向かうエレベーターに乗ろうとしたところ、掃除道具の入ったカートを押した清掃員さんと一緒になった。

そのエレベーターのキャパ的にはギリギリ掃除のカートと一緒に乗れるぐらいのスペースはあったけれど、清掃員さんがニコニコ笑顔で「お先にどうぞ」とわたしにエレベーターを譲ってくださった。

感じの良い清掃員さんだな~と思って何気なく顔を見たら、その清掃員さんこそが、例の「飲み物こぼしちゃった」お客様だったのですよ。

わたしはすぐわかったけど、清掃員さんはわたしのことをそこのファストフード店のバイトだとは気がついていないようだった。

わたしはお礼を言ってエレベーターを先に使わせてもらうことにした。

 

なるほど、ご自身がお客様に接する仕事をされているから、ファストフード店で「いいな」と思った対応にちゃんと言葉で「いいね」を返してくださったんだなあ。

 

おそらく「掃除道具のカートでお客様と一緒にエレベーターに乗らない」というのはそこの商業施設のマニュアルで決まっていることなんですよーって謙遜されるかもしれないけど、客の立場からすれば、マニュアルで決まってることをただ守るだけとは違う感じの良さってきっとあると思う。

 

わたしもマニュアル通りにやってるだけだけど、そういうお客様に「いいね」って褒めてもらえたということは、ちょっとぐらい自信を持ってもいいのかもしれない?かな?って思った、というお話でした。