あてもなく

誰かへの手紙

元にはもどらないかもしれないという覚悟

この騒ぎが収まったら、また以前と同じように楽しいことをしましょうね。

っていうのね、わたしはちょっと違うんじゃないかと思っている。

多分、以前と同じ世界は戻ってこない。

今起こっているのは「騒ぎ」ではないし、あと数ヶ月や1年そこらで「収まる」ものではないような気がしている。

 

例えば。

大勢で集まって飲み会したり朝までカラオケとか。

テーマパークで3時間待ちしてアトラクションに乗るとか。

すし詰めのライブハウスでみんなで声出して跳ね回るとか。

スタジアムの観客が一体となってひいきのチームを応援するとか。

それから、飛行機に乗って遠い国へ遊びに行くとか。

 

こういう楽しみは、きっともう過去のものになったんだと思う。

そんな風に考えると、すごくいろんなものを失った気持ちになるけれど、この危機を乗り越えてそれでも生きていくためには、一旦、過去にできた楽しいことをみんな捨ててしまう覚悟を持たなくてはいけないんじゃないかと思う。

 

というか、覚悟しようがしまいが、そのときは来る。

だったら、わたしは先にさよならをしまおうかなと思ったのです。 

 

そしてもし、この先の世界に生き残れたとしたら、これからは「とりもどす」より「つくりだす」ことが必要なんじゃないかなという気がしてます。

今はまだ「つくりだす」という時期ではないですよ。

「つくりだす」が始まるまでには、多分最低でも1年、長ければ10年ぐらいかかるかもしれない。

 

「つくりだす」が始まるまでは、どうしてればいいのかっていうと、それはもう、ただ生活を続けるだけです。

つらいけれど、

「来週からはもとの生活に戻るかも、いや、ゴールデンウイーク明けかな、あら、夏まで無理?!」

なんてずるずる引き延ばされるよりは、全部なくなったと考える方が、わたしには気が楽です。

 

ひょっとしたら故郷に住む親兄弟にはもう会えないかもしれないけど、生きてさえいれば連絡はとれるし言葉を交わすことはできるからありがたいですね。

そして、目の前に夫と子供はいてくれるので、わたしもがんばって生きようと思います。

 

期待はしないけれど、もし今「失った」と思っているものが一つでも戻ってきたらそのときは大喜びしようと思います。