あてもなく

誰かへの手紙

「テレワーク」を考える時に抜け落ちている視点(2)

前回は、家族で暮らす家にテレワークがやってきた場合、家庭にどんな影響を及ぼすのかについて想像して書いてみた。

半日分ぐらい考えただけでちょっと疲れてしまったけど、まだまだ描写したい風景はたくさん浮かんでいる。

テレビ会議に洗濯物が映るから、部屋干し片付けてっていわれる!とか。

お父さんの仕事が終わるまで家族は夕飯を食べられないのか?とか。

端的に言って、よほどきちんと考えて準備しないと、面倒なことになる予感しかない。

 

さて、ここまでは家族で暮らしている家で起こりえる困った状況について書いてきたが、この先に書くことは暮らしの形態は問わず、すべての人が考えなければならない問題である。

 

たとえば2週間なら2週間、普通に朝出勤して夜帰宅する生活をしていれば、家に人がいない間は照明やエアコンは使わないのでその分の電気代はかからない。トイレにも行かないので水道代や、トイレットペーパー等の消耗品代もかからない。

しかし、もし2週間毎日家から出ずに仕事をすることになれば、それらの経費が全部その人の個人の消費としてのしかかってくる。

照明やエアコンだけでなく、ノートパソコンを使う電気も家のコンセント、社用の携帯の電話代は会社が持つとしても、携帯の充電は家のコンセント。

家のコンセントも、当然タダじゃない。

トイレもたくさん使うから水道代が上がる。トイレットペーパーの減りが早くなる。

人がいる場所は汚れるし、ゴミが出る。そして、掃除の頻度が上がる。

掃除に関して目に見える経費は洗剤等の消耗品ぐらいだけど、当然掃除をする従業員本人もしくは従業員の家族の負担が増える。

 

一方、会社は社員にテレワークを命じた2週間、誰も出勤してこないのだから、その間照明や空調を動かす必要がない。トイレを流す水も要らないし、トイレットペーパーも減らなくなる。

ビルの掃除の為に頼んでいる業者があるとしたら、テレワーク期間の2週間は頼まなくて済むから、その分の業務委託費も浮く。

 

つまり。

テレワークにすることで、会社はそれらの経費を従業員の家庭にタダ乗りすることになるんだよね。

その辺のところ、誰も議論しないし曖昧にされているのが、気持ち悪くて仕方がない。

 

満員電車に乗って出勤しなくて良いからラクだよね、スーツとか靴とか揃えなくていいからラクだよね、家にいながら働くことができれば家事との両立がしやすいでしょ、なんて良い面ばかり言われるけれど、本当にそれは良いことずくめの「働き方改革」なのだろうか。

 

もし、テレワークがもっと当たり前になったら。

企業は、従業員が出勤するための交通費を負担する必要がなくなる。

なんなら、あちこちに事業所を構える必要もなくなる。

事業所が不要になれば、テナント料を払わなくてよくなる、あるいは自社ビルであれば固定資産税を抑えるために手放してもいいかも。

そして、上にも書いた通り、従業員が会社で快適に過ごすための経費(光熱費、清掃の費用、社食……等々)も抑えることができる。

会社にとっては経費削減になる。だけど、それらの費用は、従業員個人の家計に転嫁されるのだ。

もし「会社に来なくてもお給料は今まで通りだからお得だよね!」って会社が言うなら、それはちょっと違うのではないか。

従業員の家を営業拠点にするつもりならその分の場所代や経費も会社は負担するべきだと思う。

 

たとえばオリンピック期間の2週間、という期間限定であったとしても、受け入れる家庭は「ま、ちょっとのガマンだし」などと、なあなあにしてはいけない。

まさに軒を貸して母屋を取られるように、何の対価もなしに家庭が企業から営業拠点としての機能ごと押しつけられるとしたら、それは実質的には減給になるということをちゃんと認識しなければならないと思う。