あてもなく

誰かへの手紙



大人っぽくて難しい日本語

togetter.com

 

先日Twitterで話題になってた難しい日本語の話題。

「身内に不幸があって」と話すYoutuberに対して明らかにその言葉の示す意味がわかっていない人たちから的外れな心配のコメントが寄せられるという現象が起きていて、「若い人中心に、ちゃんと日本語の教育が行き渡っていないのではないか」などと心配する声が上がっている、というような内容。

 

「身内に不幸があった」つまり、親類の誰かが亡くなったってことを婉曲に表現する言葉。

わたしはいつそういう言い回しを知るようになったかなあと思って考えてみたけど、おそらく中学生の頃じゃないかなあと思う。

 

部活の大事な行事に出られなくなった子がいて、自分はその理由をおじいちゃんだか誰かが亡くなったと本人から直接聞いていたのだけど、顧問の先生が全体ミーティングでその子の欠席理由を「身内に不幸があったから」と表現した、それを聞いて「そういう言い回しがあるのだなあ」と知った。

 

と、まあ、この状況説明はほとんど創作ですけど、だいたいそんな感じで人はそのような大人っぽくて難しい日本語の言い回しを学んでいくんじゃないかしら。

親から教えられたとか、学校の授業の中で教わったとか、そういうことはないんじゃないかなあと思う。

 

ウチの子(高校生)が知ってるか心配になったので聞いてみたけど、ちゃんと知ってました。わたしが教えた覚えはないけど。

 

さてさて、上記のTwitterまとめも決して「最近の若い人は、ことばを知らなくて嘆かわしい」という論調ではない。

基本的に、そういうときには笑ったり嘆いたりするのではなく、優しく教えてあげればいいことじゃん~って流れであり、その中で

「もしかしたら”最近の若い人”ではなくて、外国人が日本語でコメントしている可能性もあるよね」

という指摘があって、それはちょっと鋭いなと思った。

 

それで一つ思い出した話がある。

 

大学生だったときのこと、わたしは第二外国語でドイツ語を履修していた。

その授業はドイツ人の先生が担当されていて、先生は日本語もかなり堪能だったので諸々事務的なことは全て日本語でやりとりをされていた。それほど人数の多いクラスじゃなかったので毎回ちゃんと名前を呼んで出欠をとっていた。

ある日、欠席の学生がいたので先生が近くの席の学生に何気なく「○○さん、どうしましたか?」って尋ねた。

風邪かな~?どうしたんやろ~?ぐらいの感じで待ってたら、尋ねられた学生の口から少しレアな言葉が飛び出した。

 

そう、その学生は

 

「忌引きです」

 

って答えたのだ。

 

わたしはそれを聞いた瞬間に違和感をおぼえて「あれっ、通じるかな?」心配になったんだけど、案の定、先生は

 

「えっ?キビキ…?」

 

ってなっちゃって。

それでもその学生は「はい、忌引きです」って平然としている。

 

わたしはそのとき、その学生にイラッとしてしまった。

先生の日本語力を試すためにわざとやっているならだいぶ性格が悪いし、もし天然でやってるとしたらあまりにも優しさとか配慮が足りてない人だと思った。

ありゃ、どうしよう、と、思っていたら、すぐに気がついた別の学生が「家族のどなたかが亡くなったということです」と説明してくれて「はー、そうですか」と先生は納得してその場は終わった。

 

大学教員たる者、外国人であっても「忌引き」を知っているべきなんだろか?

だけど、「忌引き」って、日本語ネイティブにとってもなかなかマニアックよね……。

 

そもそも忌引きっていうのは本人が後からしかるべき手順で届け出るものだから、ただのクラスメイトが「忌引きです」って先生に伝えるというのもなんか違う気がするし。

 

わたしが所属していたドイツ語のクラスは文学部の1年生のためのクラスで、そこにいたのは、今後は国文・英文・仏文・中文など、ことばを扱う学科に進む学生ばかりだった。

ことばや文学を学ぶ目的というのは人それぞれいろいろあるけれど、少なくとも、難しい言葉をたくさん知って誰彼かまわず使うようになるために勉強してるわけではないと思う。

言葉をたくさん知っているのであれば、むしろ、相手のバックグラウンドを考えて、より伝わりやすい言葉を選ぶこともできるはずなのだ。

そういうことを念頭に相手のレベルに合わせる事は、「周りよりよく知ってる人」の責任ではないのかな。

 

といっても、わたしも当時はそこまで深くは思っていなくて、ただ

「あの子、優しくないな。それともバカなのかな。どっちにしろ、やな感じ」

と、これまた幼い頭で考えていただけだけど。

 

「身内に不幸があって」が通じないという話題から、そんなことを思い出したのでした。