あてもなく

誰かへの手紙

扶養の制度は女性の社会進出の妨げになっているか?

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主婦が働くことを考えるときにいつも引っかかってくるのが扶養の問題だと思います。
先日の記事では扶養の制度があるから主婦は家事を抱えながら働きすぎなくて済むということを書きました。
一方で、扶養という制度があることが女性の社会進出を妨げているという意見もあります。
その辺りについて今日は考えてみたいと思います。

 

一般に低賃金の非正規就労というのは、扶養の制度ありきで設計されていると思います。
妻が扶養の範囲を超えないように働くことによって、家計全体の税金の負担や社会保険料の負担を抑えられる上、雇用する側も、通常であれば労働者ごとに負担しなければならない社会保険料を労働者の配偶者の扶養にタダ乗りすることができるからです。
しかも、ソレを叶える方法が「低賃金」なのですからそれは雇用する側にとっては願ったり叶ったりといえるかもしれません。

 

しかし、「雇用する側」とひとくちに言いましたが、会社組織全体と現場レベルの利害が必ずしも両立するわけではないところが難しいと思います。

 

会社全体のお金のことだけを考えるなら、同じ仕事をするために正社員をひとり雇うよりは、低賃金で短時間しか来ない非正規の主婦パートを何人も雇って分担させるほうが節約になります。結果として、人件費を抑えるために、より幅広い分野の仕事をパートにやらせようという動きが広がります。

 

しかし、現場レベルで言えば、細切れの知識・細切れの責任で出来る仕事ばかりではありません。
本当はみんなが正社員で仕事を回せるならそれが仕事のレベルを保つ上で最も望ましい状況です。
なので、現場ではパートであっても社員並みに広範囲の業務知識をつけてほしい、毎日フルタイムでいられない分チーム内のパート同士で徹底した情報共有・連携するように、などと求められるようになります。

 

わたしのいた職場で実際にあったことですが、その辺りが要領よくまとめられなかった人はどうするかいうと、定時が来た瞬間にタイムカードを打刻し、その後残業するようになったりするんですね。つまりサービス残業です。
現場の上長がおおっぴらにそれを求めることはありませんが、「わたしが仕事が出来ないのが悪いのだ」と劣等感のある一部のパートがいわゆる忖度をしてそのような行動に出ることについては静かに容認されていきました。

 

また、最低賃金改正でパートの時給が上がった時期に、従来どおりのシフトで働くと扶養の範囲を超えてしまうという人が続出したのですが、会社が具体的な対策を打たなかったため、個人個人が調整のために早退(実際には帰らないのに早めの時間に退勤の打刻をすることも含む)等をするようになりました。
現場の上長は収入調整のための早退打刻を容認しますが、管理部門は打刻の状況だけみて「勤怠が悪い」と指導をいれてきました。

結果として、扶養のための勤務調整をした個人個人がそれぞれマイナスの人事評価を食らう羽目になりました。

 

人事評価が下がったところでそもそも時給は最低クラスなので実質的にマイナスはないのですが、マイナスの人事評価を食らって気持ち良く働けるわけはなく、たくさんのパートが不満を抱える結果となりました。

 

というのが、わたしがパートを辞めた頃の会社の状況です。
わたし自身はサービス残業をしたことはありませんし、交通費をもらっていなかった関係で給料が他の人より少なくて勤務調整をする必要もほとんどありませんでしたので、実害は被っていません。

ただ、いろんなケースを見聞きしながら、これはかなり詰んでるなーという感想を持ちました。これが直接的な離職の理由になったわけではありませんが、働くということ自体に疑問を持つきっかけになったのは確かです。

 

この状況、一体誰が悪いのでしょうか。

こういうことは、扶養の制度の問題と言ってはならないと思います。
ハッキリと、扶養制度にタダ乗りしようとする会社が悪いんです。

会社は、働く側にとって扶養を外れても働き損にならないぐらいに時給を上げ、ケチらずにパートでもちゃんと自社の健康保険組合・厚生年金に加入させるべきです。

 

扶養の制度自体は、先日から言っている通り、家事を本業とする人を守るための大事な制度なので、無くしてはいけないと思います。

女性活躍を推進しようとする流れの中で「扶養などなくしてしまえ」という意見はよく見かけますが、それよりも扶養の制度にタダ乗りしようとする会社の実態についてもう少し厳しい目を向けられるべきだと思います。

 

またこの問題については発言し続けていきたいと思います。